長い夜道を

あの部屋の間取りをまだ覚えている 見かけなくなった褪せたピンクの灰皿  若者の声は朝に消えて グレーの邦画だけが流れ続けていた 

カプセル

死ぬほど眠いけど今日は書かなくてはならない 書き残しておかなきゃ 昨日、2年弱勤めた店舗が閉店し、今日の撤去作業で店はもぬけの殻になった 作業中は時間に追われていたのもあってひたすらにフル回転で体を動かした 怒涛の6連勤で睡眠不足と閉店セールに忙しい毎日は感傷に浸る間も無く、目の前の1分1秒を過ごすのに精一杯だった 一人、また一人と最終勤務を終えていくアルバイトスタッフ達とは別れの挨拶を交わしてもまた明日同じ職場で会うような気さえしたが 自分もこの閉店をいい機会として辞職することが決まっていたので最後の最後、上司陣に「しばらくお会いすることは無いと思います。長い間大変お世話になりました。ありがとうございました。」と自分の口で伝えた時 直後のそれぞれの優しい表情と言葉に言い表せない"終わり"を感じた なんだろうな 1人だけ長距離のバスを降りるような 既にお互いの道が別れていることの実感 全く思い入れなんて無いと思っていたが勘違いだったらしい 話がくどいエリア長も微妙な距離感の店長も 毎日少しづつ、2年と3ヶ月をかけて生活に刷り込まれていた じっくりかけられた催眠が急に解けても狼狽えない方法を教えてほしい 輪から外れて点になる感覚は何才になっても慣れない "長い間お世話になりました"なんて、言葉にすると圧倒的に短いたったの2年も自分にとっては長かったんだ 口にして初めて気づいた ストレスを生むことも泣く思いをしたこともあったけれど、初対面の人と話すことの楽しさも知ったのも、ブランドの展示会の経験も、人との繋がりがうまれる瞬間も、社会人の立場を知ったのも、友達に服を売る経験も、知人友人の来店に癒された気持ちも、一生で1番分かり合えた大切な人と出会えたのも、同棲した1年も、あの場所を通して日常があって、しっかりと自分の人生に組み込まれていた 振り返れば愛しく思えるのは間違いなく優しい人達のおかげだ これからは街であの小さいロゴを身に付ける人達を見かける度に懐かしい気持ちになるんだろうな 未練たらしくいつまでも浸るつもりはないけど 代わりに、あの小さいロゴを見かける度に思い出してもらえる存在になれていたら嬉しいなと思う

それでも過去を振り返る

出勤もロンTじゃ肌寒くなって 気がつけば11月も半ばで、今年も冬の始まりに立たされている 過信と言う名の都合のいい魔法が解けて呪いに変わった どこにも行ける気がしなくて何にもなれる気がしない アルカの裏にあるナニカみたいな得体の知れない影が足を地から浮かせてくる 大丈夫という呪文はゴーストタイプには唱えられない アウトプットが上手くできなくて頭の中が整理されない、撮り溜めたフィルムが小さい部屋に現像途中で散らばっている その下に大切で輝いて誰もが羨むようなものが埋もれている って信じていられた頃はまだよかった いつまで経っても何も手に入れられない気がして大切にしてきたものが気付かないうちに手の届かないところに行ってしまった気がしてなんだか、なんだか焦って足掻いて新しいものを探して今は諦めてしまった 駄文もさらに駄文になるし誰にもみられていないだろうって思ってもこの目はしっかり見ていて、逸らさない、許せない、誤魔化せない Twitterから消えていく仲の良かった友達も週末のInstagramもなんだか嫌で、

 

 

下書きはここまで綴られていて 2017年11月14日のものだった 僕はこの記事のもう続きを書けない なんでだと思う この日の自分はいないからだ 半年経った今 同じ気持ちにはなれないからだ 思い出してなんとなく綴ることはできる が それは蛇足以外の何でもない だってその日のその瞬間に燃えていた感情が全てじゃないか 書きたくて書いたものと書こうと思って書いたものは絶対的に違う 能動と衝動の違いだ 同じ理由でバンドの再録も嫌いだ リメイクも嫌いだ 音質が悪かろうが音が外れてようが音源にしたいという衝動に突き動かされて 納得するまで試行錯誤してこの世に産み落としたものの重みに魂を感じる 心は揺さぶられる 人間もそうだと思ってる 全てはタイミングで いざという時に巡らせて尖らせる為に生まれてきてからの今日までがある あのとき言えなかったけど実はさ…にはエンドロールで流れるNG集に近いものを感じる この瞬間が本番 あの時 も いつか も無い

 

あんたの人生あんたが王様

結局のところ僕らは誰かに愛されたいのだ あの子も、あの子も、あの子も、私も、愛されている証拠を抱きかかえてこの世に存在する価値があるのだという安心感に包まれて、全神経のスイッチをオフにして、幸せな気持ちのまま死んだように眠りにつきたいのだ それで今日が報われるじゃないか それで今日を報ってくれよ あげてよ あげるよ 僕ら何歳になってもきっと同じだよ 懐かしい記憶に現実を浸らせて人の想いに涙する 赤子だろうが老人になろうがいつかの日を忘れてしまっていようが3000年前だろうが3000年未来だろうが、人の心を動かすのは人の心だ そんなことは絶対忘れちゃいけない 好きなものを好きだと言って嫌いなものは相手にしない 妥協無しで作った今日は必ずあなたの未来を生かす

エイプリル

懐かしい匂いがした 隣に座った女性の、まったりと鼻の奥に少し甘さが残る優しい匂い 柔軟剤なのかシャンプーなのかどのメーカーのなんて名前の香りなのか全くわからなかったけど、僕は全く同じ匂いをもっと近くで吸ったことがあった 乗り換えの駅に着くまで、隣から漂う匂いを頼りに記憶に在る人を漁った ひとりひとり顔を思い浮かべて、当時のことを思い出しながら照らし合わせてみてもしっくり来ない ただひとりこの人かもしれない、という人が浮かんだ いつかの春を一緒に過ごした人だった 長い黒髪と付けまつ毛 柔らかくてさらりとした肌 少し高そうな指輪 綺麗に照明を反射していた ネックレス 初任給で買ったのって言ったっけ、言ってないっけ 最後にくれたLINE 昨日はごめんね、頑張ってね ほとんどが厚い磨りガラスの向こう側に見える 昔みた夢で、長い間苦楽を共に過ごした人達のことをお互いに忘れさせられて、数年後に偶然全員が街中で居合わせるんだけど、みんな忘れているからお互い気づけなくて でもみんな自然に涙だけ溢れて それぞれなんで泣いてるかわからないんだけど切なくて、起きたら泣いていた そんな夢を見たことがあった あの時、きっと最後に残っていたのは匂いだったんだ

おとぎばなし

ここの存在すら忘れていた 仕事睡眠仕事の毎日 頭がボケてしまって休みの日に何をするべきかも思い出せず引き篭もり 記すべき大事なことはたくさんあった 僕にとっては 宇宙の話をした 魔法の話をした まほうってしんじる?と聞かれ信じるよと答えた ライオンのアイコンはさすがてんちゃんと云う きっと僕のアイコンがうる星やつらのテンちゃんだからだ そのあといくつかやり取りをした 僕は得意げにまほうについて答えた 「この世には存在しないものはない、宇宙の中の無数の星の中に住む人間の中に一つ一つの宇宙があって それは誰にも邪魔されない魔法で、自分を信じている者だけが使える」と そんな話をした ライオンはへーわかってんじゃん!ちきゅうにもわかってるひといるんだね、と共感してくれた スピリチュアルでもなんでもないけどスピリチュアルを望むならそれでいい そう思いたいならそう思えばいい 宗教のように信仰してくれてもいい 信じることをやめないこと あなたのあたまもぼくのあたまも誰にも奪われないんだ 

1時44分の電話で君は泣いた

同窓会明けの日曜日 あんなに飲んであんなに冷静を装いながら泥酔してボロボロになりながら自室の寝床まで辿り着いたのに目が覚めたら酒灼けも二日酔いもしていない まるで全部夢だったかのような 冷静な今思い返して蘇る少しの恥ずかしさだけが現実的で 体調が悪いわけでもないのにやたらと頭の回転と身体の感覚が鈍くて一日中寝巻きのまま何処へも行かずごろごろだらりとしていた あと40分で日付が変わるという時間に今日の23時間20分分を取り戻そうと車を走らせる このまま市街に出てやろうかとするものの無意識にチェックしてしまうデジタル時計と一瞬で割り出される家までの時間そして睡眠時間と明日の電車の時間 結局、隣県に続く大橋を目の前にウインカーを右に倒し大回りをして見慣れた景色が過ぎていくのを眺めた 同じところをぐるぐると回って何を手に入れたんだろう 同じ景色しか続かないのに何を手に入れたかったんだろう ランダムに流れ続けるDIALUCKだけが意味を持つ やり残した日に何をする やり残した夜をどう過ごす やり残したことがなんなのかもわからないまま朝を待つことに耐えきれない どう過ごす 何をしたい何がしたいじゃあ何がしたかった今日をどうしたかった今日をどう生きたかった 何時に起きて何を食べて何処へ行き誰に会いたかった 焦って深夜に車を走らせてローソンのミルクココアを飲んで一服 きっとそんなことがしたいわけじゃなかったミルクココアも甘ったる過ぎたし煙草も不味かった 日常の粗探し 毎日の否定 日々感想 傍観 気に入らない出来事が流れに亀裂を入れてそれが広がるのすらただ眺めてる 何処までが自分でコントロールできて何処までが自分じゃどうしようもないのかわからないまま明かさないまま知ることも恐れてスカして諦めて手を付けようともせず何もかも見通したようなツラでわかったつもりで見通したように評価をしている そんな気がして情けなくなる 世界のことも人のことも大好きではないし大嫌いでもない 自分は自分でも驚くほど無思慮で責任感の無い人間であるし大人だからなんて言いながら大人でならなきゃいけないことなんてないとも思っている そもそも大人ってなんだたった2文字に全てを隠れさせて背負わせてまるで秘密の合言葉みたいに使ったりするんじゃない 意味を含ませているようで本当は中身なんてない その場限りの子供騙しでしかない 自分の中の正しさだけを信じるあまり基本的に他人なんて信じられないし頼らないし委ねないし都合よく解釈して淘汰している 有名人だろうが芸能人だろうが通りすがりの他人だろうが一瞬のお客だろうが幼馴染だろうが同級生だろうが元カノだろうが知り合いだろうが脳が噛み砕いてバラバラにして機械にかけて心を通して好き嫌い格好良いダサいセンス良い悪い尊敬と見下しを織り交ぜて人間関係はそんなもんじゃないなんて言いながら信じながら冷静に冷徹に振り分ける機能がついていたりする自分を呪いもせず嫌になるわけでもなく心地よさすら感じながら生きてる 10年ぶりに会った面々も今後の人生に何か大きな影響を与えてくれるわけでもなく 広がる会話も仕事と所在と異性の話に偏ってまるで卒業文集の答え合わせ生々しい映画のラストシーンそんなのもうお腹いっぱいお酒もいっぱいでおめでとうもありがとうもむず痒くて照れくさいようなめんどくさいような心地が良いものではなかったな みんなはちゃんと良い人間で目の前のことに真っ当に挑んでいるような人間でかつての同級生の結婚を心込めて祝えるような馴れ初めにもちゃんと興味を持てるような人間で 純粋で社交的でそれが羨ましくて疎ましくてまるで同じ平成を過ごしてきた人間とは思えなかった 次々に変わる話し相手と席を立つ人、人 レモンサワー三杯 火のついた煙草 可愛くなったあの子 僕は日本酒を冷やで頼んだ やっほーなんて言いながら隣に座る元カノ、幼馴染、可愛いも可愛くないも数年ぶりも十年ぶりもどうでもよくて昔の話なんてどうでもよくて最近の話なんてもっとどうでも良かった 王様ゲームでもトランプでも怖い話大会でもすべらない話大会でもやって現在を消費したかった 増えない思い出も関われない生活も一旦置いておいて、思い出作りでもなくお悩み相談室でもなく、そんなもの忘れてしまうくらいの現在が欲しかった